コラム

横浜市民はなぜ「愛市心」が強いのか

・横浜市民を生み出す装置②「開港記念日」

千葉県には「県民の日」が、埼玉県には「埼玉県民の日」があります。しかし神奈川県に「県民の日」はありません。代わりに横浜市民が持つのが「開港記念日」です。
1859年6月2日に横浜港が開港したことを記念し、 1周年にあたる1860年の6月2日に山車や手踊りで街中あげて開港を祝ったのが、 開港記念日の始まりだと言います。今日でも市をあげての祭典が執り行われており、市内の小中高生を対象によこはま動物園ズーラシア、金沢動物園、市民プール、横浜美術館などを、多くの施設が無料となります。
当然開港記念日には市立学校は休みになるわけです。嬉しいよね。すでに「開港ありがとう!」「横浜市サイコー!」という気持ちになっちゃいそうです。
ですが流石の横浜市、抜かりなくもう一手間加えて駄目押ししています。それが市立小学校で開港記念日の前に開かれる「開港記念集会」です。

実際にどのようなことが行われているのか小学校のホームページを参照してみると、

◉横浜市立川和東小学校
「昨日の朝会で、横浜開港記念日(6月2日)、(中略)についての話をしました。社会科部の職員がスライドを用いて開港当時の横浜の様子を話したり、途中クイズを出したりしながら進めました。子どもたちは興味深く聞きながら、最後に全員で横浜市歌と校歌を歌い記念日をお祝いしました。」

◉横浜市立十日市場小学校
「6月2日の開港記念日について全校集会をしました。アイスクリームやテニスなど、横浜発祥のいろいろな文化をクイズを通して楽しく学びました。これを機会に、ご家庭でも横浜について話し合ってみてはいかがでしょうか。」

◉横浜市立川上小学校
「6月2日の開港記念式に先がけて、5月25日に開港記念集会を行いました。/横浜のまちが、どのように発展していったのか、スライドを見ました。/ペリーが、黒船でやってきた・・・6年生が社会で学習する内容もありました。/横浜に関わるクイズをしました。みなさんは上の写真の答え、分かりますか?横浜には、多くの「日本ではじめて」がありますね。/最後に横浜市歌を歌いました。これからも、自分たちが育ったまちを大切に思っていけるとよいですね。」

このように、学校ごとに多少の差異はあるものの、「開港記念集会」は

①6月2日の休校日は「開港記念日」であることを確認 ②開港の経緯や「横浜もののはじめ」など、開港期の横浜について学ぶ ③「横浜市歌」を歌う

といった内容となっています。

つまり、開港記念日の前に「開港記念集会」を設けることで、休みになる理由が駄目押しのように強調され、「学校が休みになるのは港のおかげである」という意識を植え付けられるわけです。そして、そのような状態の中で開港の歴史を学び、例の横浜礼賛ソング・「横浜市歌」を歌うことでさらに横浜市に対する愛着が養われていくわけです。これはもう、洗脳待った無しでしょう。

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